いざというときのためにやっておきたいBCP対策とは?

2011年3月に発生した東日本大震災以降の日本では、予測を超える規模の自然災害に見舞われることが増えてきました。そのほか、テロ、サイバー攻撃、パンデミック(感染症の世界的流行)など、社会は予測不能な出来事と常に隣り合わせです。このような緊急事態に対応できる体制を整えておかないと、企業、とりわけ中小企業は命取りになりかねません。BCP対策は、そういった事態を回避するためのものです。この記事で、わかりやすく解説します。

BCP対策とは?

BCP対策のBCPとは「Business Continuity Plan」の頭文字を組み合わせた言葉で、日本語に訳すと「事業継続計画」です。ポイントは「継続」という言葉が入っていることで、いわゆる「事業計画」とは異なることをまず頭に入れておきましょう。

事業計画というのは、それぞれの企業が将来の成長を見定めて立案します。その計画は、自然災害、テロなどが起こることは想定せず、社会に大きな変化がないことを前提としたものです。

では、BCPが意味する「事業継続計画」とは何なのでしょうか。これは、台風や地震などの自然災害、大規模火災、テロなど、どんな事態に遭遇しても、企業として事業を継続するために策定しておく計画です。

記憶に新しい新型コロナウイルスの流行は多くの飲食店や旅行関係の企業を直撃し、閉店や倒産を余儀なくされる企業が多数ありました。同様に、テロ、大規模なシステム障害や情報流出といったことも、企業経営に大きなダメージを及ぼしかねません。

BCPは、このような不測の事態へ対処するものです。BCPがあれば、その計画に沿って手をうち、事業への損害をできる限り小さく抑えることができます。そうすれば経営は立て直しやすくなります。計画書やマニュアル作り、実地訓練も含めたBCP対策は、企業にとっては命綱ともいえることなのです。

もしかしたら「それは、防災対策のこと?」と疑問に思う人もいるかもしれませんが、防災対策とBCP対策は、少々異なります。
防災対策は人命や資産を守ることに重点を置いたものですが、BCP対策は事業継続に重点を置いたものです。もちろんBCP対策でも、人命が最優先であることは言うまでもありませんが、微妙なニュアンスの違いがあることを理解しておきましょう。

BCP対策を行うべき理由

地震、テロ、サイバー攻撃などの緊急事態は、いきなり発生します。台風などの気象に関することやパンデミックについてはある程度の予測が可能ですが、だからと言って安心しているわけにはいきません。想像を超える規模になることもあり、そうなると、とても人の力では太刀打ちできないからです。

事業が打撃を受け、仕事や顧客を失う危機というときに何も対策ができないでいては、倒産や廃業は避けられないものとなってしまいます。そこまではいかなくても、事業の縮小、従業員の解雇に踏み切らなければならないこともあるでしょう。

このようなとき、少しでも事業を継続し、さらに復旧を図ることができれば、顧客を手放さずにすむだけでなく、従業員の解雇も避けられます。これは企業としての信用につながるだけでなく、業界の関係者からも高く評価してもらえる取り組みです。つまり、企業として継続が可能となるだけでなく、企業ブランドや信用度をアップすることにもつながる取り組みがBCP対策であるということになります。

BCP対策を進めるためのポイント

BCP対策の意味、必要な理由がわかったところで、さっそく策定に――と動きたいところですが、その前にBCP対策を推進するポイントを押さえておきましょう。

自社事業の優先順位を決める

緊急事態に遭遇したとき、手がけている事業のどこから手を打つか、優先順位を決めておきましょう。あらゆる事業を継続させることができればもちろんそれがベストなのですが、あれもこれもと欲張ると、結局は総崩れになってしまう危険性があります。

自社の事業を洗い出し、メインとなっている事業、顧客や売上に大きく影響する事業から優先して順位をつけます。順位をつけたら、その事業を継続するために必要なことも洗い出しておきましょう。具体的には、担当者、設備やシステムなどです。また、どのくらいの時間で復旧させるかの目処も立てておきましょう。

サイバー攻撃、地震など想定される被害損失の分析をする

次に、想定される被害損失を細かく分析します。
例えば、メインシステムがサイバー攻撃を受けた場合、どのような被害が発生し、損失額はどのくらいになるのか、地震で交通網やライフラインが寸断されたときはどうかなど、細かく想定して検討してみてください。

分析ができたら、どのように事業を立て直すかの案を組み立てておきましょう。責任者やメンバー、指示の拠点、資源の調達先、協力先の選定など、緊急事態が発生したときにすぐに実行できるレベルにしておくことが大切です。

従業員への指導や教育、社外への周知をしっかり行う

BCPを作ったものの、誰も知らないのでは役に立ちません。
全従業員にBCPの内容を知らせ、指導や訓練も行っておきましょう。必要に応じて、協力先や顧客にも周知を徹底してください。

なおBCPは、定期的に見直しをかけ、バージョンアップしていくことが重要です。指導や訓練で改善点が見つかったときも、随時手直しをして、最新の状態にしておきましょう。

BCP対策とは、緊急時、おもに中小企業が生き延びるための手法として、中小企業庁が推進してきたものです。自然災害だけでなく、予想もしなかったような出来事に見舞われる時代の中で、自社の事業や従業員、顧客を守るためにも、ぜひ記事の内容を参考にして、策定を進めてみてください。

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