ここを注意しよう! 働き方改革に失敗してしまう主な理由

労働環境を見直すことで一億総活躍社会を実現し、ひいては、働くひとりひとりの健康と幸せを実現しようとする働き方改革。国の政策として、2019年から大手企業が、2020年からは中小企業も含めて取り組みが始まっています。ところが、多くの企業から「うまくいかない」「失敗」という声が......。働き方改革を推進するためにも、失敗の理由を知って対処していきましょう。

働き方改革とは?

働き方改革とは、2019年4月1日から順次施行されている「働き方改革関連法」に基づく国策です。
厚生労働省のサイトによると、背景にあるのは、少子高齢化や社会構造の変化など。もう少し詳しく説明すると、働くひとりひとりが、個々の事情や状況に応じて柔軟な働き方のできる社会にしていかなければ国が立ち行かなくなる――という危機感が背景にあります。
そこで、多様な働き方が可能な社会を作り、働く誰もが将来に希望が持てるようにすることを目指し、働き方改革を推進することとなったのです。
改革には、大きな3つの柱があります。

1. 残業時間に上限規制を設けるなどして対処する「労働時間の是正」
2. 正規雇用と非正規雇用の格差をなくす「同一労働同一賃金」
3. 人それぞれの事情に応じて多様で柔軟な働き方ができる「脱時間給制度」

どのように実施するかは企業規模や業種によっても異なりますが、この3本柱について取り組むことが、企業それぞれの「働き方改革」といえます。

参考:働き方改革をするにあたって必要な労働環境の改善方法

働き方改革が失敗してしまう主な理由

紹介した3本柱のうち、2は企業側が対処すること、1と3は企業の旗振りのもと、社員が実施することです。それがうまくいかず失敗してしまう主な理由としては、次のことが考えられます。

役職者が働き方改革に好意的ではない

日本の企業には昔から、「定時に出社して、残業もいとわずに長時間働くことが会社に貢献することであり、評価されることである」とする風潮があります。役職者をはじめとした経営陣にそういった考え方が浸透していると、その逆を目指す働き方改革は賛同しかねるものに......。「社員は、上司の目の前で叱責されながら成長するもの」「終電で帰宅することがビジネスマンの誇り」などと考えている役職者にとっては、テレワークも残業時間削減も論外と思われることも。
表面上は働き方改革を実行すると口にしながら、本音は「そんな必要はない」と思っている場合、本音と建前が違うわけですから、働き方改革もうまくいくわけはありません。

いまだデジタルアレルギーの人が多い

いまはデジタル化が進み、あらゆる書類をパソコンで作り、しかも共有することができます。
しかし、デジタルでの処理にアレルギーがあり、まだまだアナログ頼みの企業が多いことも確かです。上司の決裁を受けるためには紙の稟議書を回さなければなりませんし、出張旅費や必要経費の精算も書類を提出して......と、デジタルですませれば短時間ですむことに、どうしても時間を取られてしまいます。まわりまわって、残業時間が増えるなどの悪循環を生み出してしまうのです。

新しいルールや制度が浸透がしない

新しいルールや制度を作ったのに、浸透せずに失敗ということもあります。その原因としては、社員への告知が徹底していないことのほか、ルールや制度が社員の実態に即していない可能性も否定できません。

せっかく考えて作ったルールや制度が浸透しないのは残念です。「そんなルールができたなんて知らなかった」「こんな制度では利用できない」という社員の声はないか、ぜひ耳を傾けてみましょう。

このままではいけないという危機感がないことも

働き方改革をうまく進めている企業に共通しているのが「このままではいけない」という危機感を持っていることです。これまでの論理が通用しない時代の変化にさらされ、「企業として存続できない」という危機感にさらされると、どうしても手を打たざるを得なくなります。
逆にいうと、その危機感がない、あるいは薄い企業は、働き方改革にも身が入らないのではないでしょうか。そのため、結局は失敗につながってしまいます。

働き方改革を失敗しないためのポイント

せっかく考えて実行しようとする働き方改革です。失敗しないためにも、次のポイントを意識していきましょう。

社内全員にルールを浸透させる

まずは、働き方改革の目的、実行項目を社内全員に浸透させましょう。
具体的には、コンパクトに趣旨をまとめたパンフレットの配布、説明会の実施といったことが有効です。説明会を実施して質疑応答の時間を設ければ、疑問があってもすぐに解消でき、お互いにとってメリットがあります。

他社の成功事例をそのまま使わない

よくあるパターンが、他社の成功事例をそのまま自社にも導入しようとすることです。しかし、よその会社と自分の会社では、組織のあり方も、経営方針なども違います。研究する姿勢はよいことですが、そのまま取り入れるのではなく、自分の会社に合うように手直しをしていきましょう。

上層部だけの意思ですすめない

上層部だけの意思やアイデアではなく、働く社員の声も取り入れていきましょう。方針を示すのは経営陣ですが、実行するのは社員です。ここに齟齬があると、うまくいくこともいかなくなってしまいます。
改革案について、1週間程度のテスト期間を設けて社員に実行してもらい、結果や感想をフィードバックしてもらうなど、社員と意思疎通をはかりながら働き方改革を推進する姿勢が重要です。

働き方改革が失敗する理由、成功させるためのポイントについてお伝えしました。せっかくさまざまなルールや制度を作ったのに「うまくいかない」という状況は、とても残念です。だれもが笑顔になり幸せを感じられるよう、ぜひこの記事を参考にして取り組んでみてください。働き方改革がうまくいくと、社内が活性化し、業績アップにも結びつくことが期待できます。